シナリオの迷宮 ~あるいは(無恥がもたらす予期せぬ軌跡)

脚本愛好家じぇれの思考の旅。とりとめもなく綴っていきます。

『人魚伝説』映画を殺したのは誰だ(ネタバレなし)

こんにちは、じぇれです。

今日は前置きなしに行ってみましょう。
凄い作品ですよ~!

《地獄の映画100本ノック その8 『人魚伝説』》

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撮影所システムが崩壊した1982年。『太陽を盗んだ男』の鬼才・長谷川和彦監督の下に新進気鋭の監督達が集って、監督主導の映画作りを目指したのが、かのディレクターズ・カンパニー。
様々な問題が起き10年で幕を閉じたものの、『逆噴射家族』『台風クラブ』『ウホッホ探検隊』『DOOR』といった話題作・意欲作を多数生み出しました。

その記念すべき長編映画第1作が、池田敏春監督の『人魚伝説』なのです。

それだけに、気合いの入りまくった妥協なき作品で、クライマックスは呼吸も忘れるほど。

鑑賞直後の感想はこちら__

プロットを簡単に言えば、夫を殺された妻の復讐劇なのですが、そんな平凡な枠組みには収まり切らず、、、
情念に満ち満ちた映像世界は加速度的に肥大化し、気づけば我々観客をも飲み込んでしまうんです。
その凄まじさは、大傑作『太陽を盗んだ男』を彷彿とさせるほどのパワフルさ!

当時の原子力発電所推進計画への怒りを露わに、池田敏春監督は暴走していき、お嬢様系女優だった白戸真理さんは一糸纏わぬ姿で復讐の血まみれ女神に!

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いやぁ、白戸さんの豹変ぶりにはただただ圧倒されました。

とまぁ、気鋭の映画監督達が集まったディレクターズ・カンパニー第1作は、コンプライアンスとは無縁の社会派超絶エンターテイメントであり、同時に日本の”作家主義”の夜明けでもあったわけです。

「夫を殺したのは誰だ」という主人公の叫びは、私にはこうも聞こえます。

「映画を殺したのは誰だ」

製作委員会方式が蔓延る現在の日本映画界では、絶対に到達できない領域に、本作は踏み込んでしまっています。
まもなく2020年。ディレクターズ・カンパニーの魂を受け継ぐ監督集団が立ち上がってもいいんじゃないでしょうか?

ホント凄まじいので、皆さん観てください!