『ガマの油』役所広司、監督に挑む(ネタバレなし)
役所広司さん、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞おめでとうございます!
というわけで、役所広司さんが監督に初挑戦した『ガマの油』を初鑑賞!
《地獄の映画100本ノック その2 『ガマの油』》
※核心に触れるネタバレはありませんが、メインテーマには少し言及します。
なのですが......
『ガマの油』
— じぇれ (@kasa919JI) 2019年3月8日
役所広司さん初監督作品なのですが、なかなかの難敵。植物状態になった息子になりすまし、息子の恋人と電話を続ける父親の寓話。う~ん、世界観に今ひとつ馴染めませんでした。今や埼玉の星(?)となった二階堂ふみさんのデビュー作としては貴重な1作。#地獄の映画100本ノック その2 pic.twitter.com/JtxqIZqS9d
とまぁ、初回時はノリきれないまま映画は終了。
脚本と演出がぶつかってしまっていて、”ガマの油”ならぬ”水と油”状態のように感じてしまったんですよ。
しかし、こんなモヤモヤした状態ではレビューを書けないなぁと、改めて2回目の鑑賞に挑みました!
さて、感想を書く前にちょっと余談を。
【役所広司が組んできた名監督たち】
岡本喜八、五社英雄、今井正、伊丹十三、森崎東、山下耕作、細野辰興、原田眞人、小栗康平、周防正行、黒沢清、今村昌平、森田芳光、市川準、根岸吉太郎、青山真治、市川崑、成島出、三谷幸喜、樋口真嗣、井坂聡、中島哲也、木村大作......
(『ガマの油』以降では、三池崇史、杉田成道、沖田修一、小泉堯史、細田守、是枝裕和、白石和彌らも)
なんだこれ? 生きる日本映画史じゃないですか!
しかも、海外ではロブ・マーシャル、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、フランソワ・ジラールの作品にも!
これだけの名手達の演出を受けている名優ですから、自然と引き出しは多くなるのでしょう。
実際、引きを多用したオーソドックスな映画的画作りを中心にしつつも、凝ったアングルや編集を随所に散りばめています。
ただ、これが脚本と噛み合っているかというと......
【あらすじ】序盤のみ
主人公はデイトレーダー(役所広司)。数億の金を動かし、時に豪快に笑う男である。
ある日、彼の息子(瑛太)は昏睡状態に陥る。その恋人(二階堂ふみ)からの電話に出た主人公は、息子と間違われ、そのまま息子のフリをする。
そして、そんな偽りの関係は続いていき......
【軸が見えない物語構造】
勿論最後まで観れば、役所監督が伝えたかったことはしっかりと伝わってきます。しかし、鑑賞中はずっと森を彷徨っている気分に陥ったんですよ。
簡単に言えば「何を見せられてるんだ!?」って感じ。
だって、おっさんがJKと恋人風にケイタイで話すだけでなく、益岡徹がオーバーアクトでガマの油売りを披露したり、唐突にガッハッハと笑い出したり、しまいにはクマと格闘し始めたりするんですよ......
しかも、そういうところで妙に凝った演出が加わるので、どうにも本筋がわからなくなってしまいました。
そもそもこのプロット自体が少々技巧的で、悪く言えば煩雑なんですね。
虚実入り乱れるシーンもあり、脚本家はある種の寓話に仕立てようとしたのでしょうが、これは新人監督(しかも主演兼任)には難易度が高すぎたんだと思います。
役所広司出演作でいえば、中島哲也監督作『パコと魔法の絵本』のような路線なんですけどねぇ。
【何を期待して観ればいいのか】
とはいえ、主人公が息子の恋人に語る最後の一言は心に沁みます。
詰め込みすぎで未整理な物語ですが、「主人公が大人としての自覚を持つまでの心の旅路」だと考えてください。
そうすれば、道中迷子にならずに、爽やかな感動を得られるかもしれません。
実際、2回目の鑑賞ではホロッとしました。
役所監督、もう少しストレートな脚本で、もう1作撮ってみませんか?
【最後に】
ちなみに、本作が二階堂ふみの映画初出演作とのこと。
感情むき出しで恋人にぶつかってくる女の子を元気に演じています。
デビュー作ですので上手いとは言えませんが、とても好感の持てるまっすぐさ。
二階堂ふみファンは観ましょう!